眠り姫
9月。夏の終わり。
それでもまだまだ暑くて、少し歩いただけで額に汗が滲んだ。
古い、小さな扇風機から、気休め程度の弱い風が吹いていた。
扇風機の設定を、”弱”から”強”にしたい気持ちを抑え、少しでも涼もうと、ワンピースを扇風機の前ではためかせた。
だって、向かいのソファで眠り姫がスヤスヤと寝息を立てていたから。
扇風機の音で彼を起こしてはいけない。
今日授業もないのに部室に来たのは、先輩に会うためだった。
今日は大学で委員長会議があって、副委員長の小森先輩が今日都合の悪くて行けない委員長の代わりに出席することを知っていた。
そして、小森先輩のことだから、終わったら部室で漫画でも読んでから帰るんだろうな、と。
・・・まさか寝てるとは思わなかったけど。
本当は、大事な話があった。
しかし、話せないのも、これも運命なのだろう。
先輩の少し汗ばんだ頬をゆっくりとなぞり、彼が寝ていることを確認した。
「小森先輩、起きないでくださいね・・・」
そう言って、スヤスヤと眠るお姫様に、そっと口付けをした。
心の中で、さようならと呟いて、部室を出ようと立ち上がった。
ーーーが、次の瞬間、手を引かれ、再び唇が重なった。
夏休みの三日前。
ヒグラシの鳴く夕暮れに、眠り姫を目覚めさせた王子はわたしだった。
それでもまだまだ暑くて、少し歩いただけで額に汗が滲んだ。
古い、小さな扇風機から、気休め程度の弱い風が吹いていた。
扇風機の設定を、”弱”から”強”にしたい気持ちを抑え、少しでも涼もうと、ワンピースを扇風機の前ではためかせた。
だって、向かいのソファで眠り姫がスヤスヤと寝息を立てていたから。
扇風機の音で彼を起こしてはいけない。
今日授業もないのに部室に来たのは、先輩に会うためだった。
今日は大学で委員長会議があって、副委員長の小森先輩が今日都合の悪くて行けない委員長の代わりに出席することを知っていた。
そして、小森先輩のことだから、終わったら部室で漫画でも読んでから帰るんだろうな、と。
・・・まさか寝てるとは思わなかったけど。
本当は、大事な話があった。
しかし、話せないのも、これも運命なのだろう。
先輩の少し汗ばんだ頬をゆっくりとなぞり、彼が寝ていることを確認した。
「小森先輩、起きないでくださいね・・・」
そう言って、スヤスヤと眠るお姫様に、そっと口付けをした。
心の中で、さようならと呟いて、部室を出ようと立ち上がった。
ーーーが、次の瞬間、手を引かれ、再び唇が重なった。
夏休みの三日前。
ヒグラシの鳴く夕暮れに、眠り姫を目覚めさせた王子はわたしだった。