Syndrome not to need
「付きましたよ。」

私が今住んでいる佐久家についた。
その頃にはもう私の涙はとまっていて、
父親のリラックスしていた格好はいつの間にかきちんとしていた。

『ジーーーッ』

私は鞄を開けて、何もついていない佐久家の家の鍵を出した。
父親は、私の後ろをついてきていた。

「ただいま、叔母さん。」

すると、叔母さんはいつものようにたったったっと小走りでやってきた。

「お帰り秋穂ちゃ……お兄ちゃん?!けほっこほっ……」

「…久しぶり、陽子。急に来て悪い。」

「叔母さん体弱いんだから走らないで驚かないで身体大事にして。」

叔母さんは一人男の子を産んだけれど、それから体が弱いのが悪化して余計に悪くなった。

「あ、ごめんなさ…秋穂ちゃん腕どうしたの?!」

「あ…………いや、……転んだだけ………。」

血の滲んだシャツを咄嗟に手で隠して、私は安心させたいがために少し笑った。

「…………そっか。事情はお兄ちゃんから聞くね。とりあえず怪我したところ見るからね。
もうすぐ清志さんも帰ってくるから3人で話しましょう。」

清志さんとは、陽子さんの旦那さん。
無口であんまり話さないけど、凄くいい人。

「いやでも俺仕事が…。」

「なんか言った?」

「………いいえ…。」

陽子さん、強い……。

「じゃあお兄ちゃんは外にまたせてる秘書さん連れてきてあげて。
一人じゃかわいそう。」

「…わかった。」

そして父親は玄関から駐車場へ降りていった。
というか秘書さんってだれ…?

「秘書さんって誰ですか?」

「あぁ、ここまで運転してきてくれた人よ。
さ、入って入って。怪我した所見なきゃ。」

あの人、父親の秘書さんだったんだ…。
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