もう一度君を  この腕に
「酒井さん?」

僕は呼ばれてハッとした。

コンシェルジュの園倉美咲がいつの間にかそばにいた。

「一緒に食べていいですか?」

なぜ彼女がそんなことを言うのか僕にはわからなかった。

彼氏の野原はどこにいるんだろう。

今まで僕を取り囲んでいた女子が遠のいたような気がした。

「酒井さん、ノンアルですか?」

「そうだけど。」

園倉は鈴の音が鳴るようにコロコロと笑った。

僕はバカにされたようで気分を害した。

彼女がモテ系なことくらい僕も知っていたし

顔が可愛らしいのも事実だが

八方美人的な人格は僕の中では敬遠したい。

「じゃ、僕は先輩に用があるから。」

今すぐ木村を探さないと話す機会を失ってしまうと僕は焦った。

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