FIRST KISS ~オムニバス~
「痛ってぇ……。」
大きい君の胸の上。
いつもより鼓動が多かった。
「お前何してんだよ……。」
「ゴメン、でもお父さん下にいるし。」
「いるし?」
もう、気持ちに嘘は吐きたくないと思った。
「このままじゃ嫌だったからっ……。」
君を抱き締めて、泣いたんだよ。
涙は出てないけど、心の中で。
あたし、泣いちゃったんだよ?
「え?」
「あたし、好きなのに……。ずっとずっと、好きだったのに。」
君の頬が赤かったら良いのに。
君の温もりが包んでくれれば良いのに。
この日、全ての願いが叶った。
「照れるし、やめて……。」
温かかった君の腕の中。
いつまでも、ここにいれますように。