あたしをア・イ・シ・テ
向こうのほうから、走ってくる足音が2つ近づいてくる。
…2つ?
ということは、唯翔は拘束されてはいないんだ。
「奈々加!なんでここに芽衣がいるんだよ!?俺がいれば芽衣には何もしないって言っただろ!?」
「言ったっけぇ?」
二人の会話の内容がいまいちわからない。
唯翔がいれば、あたしに何もしない…?
「芽衣!!」
「唯翔!」
一瞬、月明かりに照らされ焦った表情の唯翔が映し出された。
と、同時にあたしに抱きついてきた。
「本当にごめん!!事情は全部説明するから、今は俺の言うことを聞いてくれ」
あたしが縛られている辺りは、暗くて唯翔の表情は見えないけど真剣な顔をしてるだろうな、とぼんやり思った。
「唯翔…、あたし…」
「ちょっと!あたしのユイトに触んないでよ!」
唯翔を追って、今追い付いてきた奈々加がはぁはぁと肩で息をしながらそう叫ぶ。
「なに言ってるの、唯翔はあたしの…」
言いかけたところで、唯翔に口を塞がれて、あたしは首を傾げた。
なんで言わせてくれないの?
すると、そんなあたしの言いたいことがわかっていたように唯翔はあたしの耳元で
「今、コイツを刺激してもなんにもなんねぇから」
と言った。