あたしをア・イ・シ・テ
縁に手を掛けると、キキ、と少し嫌な音がたった。
もうこの際音がなっても仕方ない。
錆び付いた窓はすごい音をたてて開いた。
外はやっぱり暗くてさっきまでの月も雲に隠れてしまったらしい。
「…そうだ、警察に」
あたしは窓から飛び降りたあと、そう思って走り出した。
そうだ、なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだろ、公衆電話を探して警察に…!
「きゃあっ!!?」
なにかにつまづいて転んでしまった。
いや、つまづいたと言うより、引っ掛かったというような…
「はーん?お前が奈々加を貶めたやつか」
「は…?」
あたしは立ち上がることも忘れて、声の主を見上げた。
薄暗くてはっきりはわからないけど、こいつは奈々加の幼馴染みの松田侑矢だ。
…あたしの作戦がまたも悪い方向へと進んでしまった。
侑矢を巻き込んだのは自分自身だから。
「きたねぇと思わねぇの?人の彼氏を盗るなんてさぁ」
「…はぁ?その言葉そっくりそのままあの子に言ってあげれば?」
あたしは膝についた砂を払いながら立ち上がり、睨み付けながら言った。
勘違いなバカがまた増えてしまった。