あたしをア・イ・シ・テ
二人が病室から出ていき、夏芽は携帯を持って立ち上がった。
「お母さんたちに連絡するの忘れてた!ちょっとしてくるね」
「うん」
さっきからなんで夏芽しかいないのか気になっていたけどあたしが寝ている間、何かあったのかもしれない。
頭が痛い。
もう少し寝ようかな。
何があってこうなったのかは全く思い出せないけど、何か大切なことを忘れているような。
でも考えることを脳が拒否するように頭痛がしてきて、あたしは目を閉じた。
目を閉じてすぐにカララ、と病室の戸が開く音がして起き上がった。
「あ、芽衣さん起きててよかった」
微笑みながら歩いてきたのはさっきの若い警官のお兄さん。
さっき一言も話さないから、大人しい人かと思ったら意外と気さくな話し方をする人だと思った。
「なにかありました?」
「芽衣さんのほかに今行方不明の人がいて、知り合いかなと思って聞きに来たんだ」
あたしのほかにも行方不明の人?
「なんて人ですか?」
「"杉浦唯翔"って男の子。ユイトなんて名前、珍しいよね」
あたしはその名前を聞いた瞬間、ぴくっと手が震えた。