あたしをア・イ・シ・テ



奈々加と香川さんが揉め合うなか、三崎さんがあたしの元に駆け寄ってきた。


「どうせ君、来てると思ったから出来るだけ急いだんだ。けど怪我させちゃったな…」


三崎さんは病院から抜け出したあたしを怒るでもなく、ただ傷口にハンカチを結びつけてくれた。


「あ、りがと三崎さ…。はやく、唯翔…」


呂律が回らない。

なんだろう、恐怖?


「あぁ、わかってる。香川さん!こっち二人は任せてください」


「もう救急車は呼んである。俺はこれからコイツを連れていく」


「離して!!!」


暴れる奈々加をいとも簡単に押さえつけて、香川さんは部屋を出ていった。


「…つかれた…」

奈々加が警察に連れていかれて、ほっとしたのか体がダルい。


あぁ、でも唯翔の側にいたい。

もう少し頑張って、あたしの身体。


あたしは震える足を無理矢理立たせて、唯翔の側まで歩いた。


三崎さんが唯翔になにか言ってるみたいだけど、唯翔の反応はない。


「睡眠薬、飲まされたって」

「ああ。反応がない。でもほかに体に異常はないみたいだ」


あ、唯翔のズボン穿かせてくれたんだ三崎さん。

なんかなぜかあたしが恥ずかしかったからありがたい。



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