あたしをア・イ・シ・テ
危ない女 side:唯翔
Ⅰ
「唯翔センパイっ、帰らないんですか?」
「あー…、あともうちょい」
その日は、土曜の午前練習で次の日は確か練習試合が入っていた。
午後からは芽衣と会う予定で、一人であと何回かシュートのイメトレをしてから帰るつもりだった。
そんなとき、マネージャーの相沢に声をかけられた。
「一緒に帰りませんか?待ってるので」
相沢はサッカー部で揃えた白のエナメルバッグを肩にかけ直しながら言った。
「いや、遠慮する。前にも言ったけど俺、彼女いるし」
前から何度か帰りやご飯に誘われたりしていたけど、芽衣以外の女と遊ぶ気もなかったし、全て断っていた。
よく懲りないな、なんて思っていた。
「…知ってますよ。これから会うんでしょ?」
「は?なんで知って…」
練習の汗とは違う嫌な汗が背中を伝った。
なんだ、コイツの表情…。
いつもとは180度雰囲気が違う。