あたしをア・イ・シ・テ
「おーい、唯翔の行方知ってるやついねぇー?」
ドアを開けたまま、先輩が言うとざわざわ、とした後、1人の男子が近づいてきた。
「唯翔なら、なんか今日は用事があるって言ってたし、部室来ないらしいよ?てっきり芽衣ちゃんとお昼食べるからだと思ってた」
茶色の癖っ毛をいじりながらそう言うのは、隣のクラスの槙野 彼方(マキノカナタ)くん。
この人は去年あたしと同じクラスで、結構話もするような仲。
少し天然の入ったユルい人って感じ。
「えぇ?あたしは違うよ?」
「真治先輩、外まで声聞こえて…、って、うわっ、なんで芽衣がここに!?」
後ろからそんな声がして、振り返るとそこには、唯翔と女の子がいた。
「あ、噂をすれば唯翔じゃん。って、なんで奈々加も一緒?」
先輩が言うと、唯翔は思いっきり動揺している。
ふぅん、その子なのか、唯翔?
奈々加、ね。
ちら、と上靴の色を見るとあたしとは違うし、先輩とも違う。
と言うことは、1年生。
1年生で先輩が知っていると言うことは、マネージャーってところかな。
「あ、あー、部室来ようと思ったら偶然会ったんで」
「今日はなんか用事があって来ないんじゃなかったの?」
すかさず彼方くんも口を挟む。
あはは、唯翔追い込まれてるよどうする?
あたしの前で浮気バレちゃう?
部員の前でバレちゃう?