あたしをア・イ・シ・テ
「行こう、唯翔」
あたしは唯翔の左手を無理矢理握った。
すると唯翔はびっくりした顔をしてあたしを見た。
いつもこんなことしないのに、って思ってるのかな?
「…お前、手震えて…」
「へ?」
唯翔と手を繋いでいない左手を目の前に持ってくると微かに震えているのがわかった。
平気、と笑いかけようとすると思いきり強く抱き締められた。
たぶん、唯翔なりのゴメンのつもりだろうな。
悪いのは全部…奈々加なのに…。
数分間そのままで、どちらともなく離れてあたしたちは歩きだした。
あんなことが起こるとも、知らずに…。