あたしをア・イ・シ・テ
相変わらず周りは木ばっかりだけど、
頂上は広場のようになっていて、真ん中に白い高台、
その奥には手すりがあって、この広場からでも景色が見えるようになっていた。
そしてその手すりにあたしたちに背を向けて寄りかかっている人が二人。
遠目でもわかる、片方は奈々加だ。
片方はフードを被っていて、髪とかは見えないけど思い当たるのは一人しかいない。
たぶん、侑矢だ。
あたしは一気にあのときの恐怖を思い出して足がすくんでしまった。
「芽衣」
ぎゅっと唯翔に手を握られる。
「怖いならここで待っててもいいぞ。俺が話をつけてくる」
「…大丈夫、少しだけ待って」
深呼吸を数回繰り返して、心を落ち着かせる。
今日で、もう、終わらせるんだから。
あたしは意を決して、唯翔の手を引いた。
残り数メートルのところで、枯れ葉を踏んでカサッという音がして、二人が振り返った。
奈々加はあたしを見ると少しだけ目を見開いて、すぐに元の表情へと戻った。
侑矢はマスクをしていて、表情は見えなかった。