あたしをア・イ・シ・テ
「芽衣…先輩に唯翔先輩。呼び出してすいません」
その奈々加の声色に、この間のような狂気じみたものは含まれていない。
そのことにとりあえず安心した。
「話ってなんだ?」
唯翔が少し鋭い声で話を切り出す。
「話…というか、お二人に謝りたくて。たくさん迷惑かけて、傷つけて、すみませんでした。
それと、もう一つ…」
力なく笑う奈々加は本当にアレと同一人物なのかと疑いたくなってしまう。
奈々加の隣に立つ侑矢は、下を向いたままでこちらを見ない。
なんのために来たのだろう?
それに謝る以外に話があるって、一体なんの話をするつもり?
「侑矢」
奈々加が名前を呼ぶと、侑矢は顔を上げ、フードをとった。
「…!?」
その顔を見た瞬間、あたしと唯翔は絶句してしまった。
顔は腫れ上がり、右目には眼帯をしていた。
そして、マスクをしていてそれを外すと唇にも痛々しい後があった。
怪我をして時間はたっているだろうけど、それでも傷は深いように見える。
まるで、喧嘩をしたような後が、侑矢の顔にあった。
「どういう…こと?」
あたしは声を絞り出してそう言った。
「芽衣先輩、あの工場から出たあと侑矢に襲われましたよね?」
「あ…うん」