あたしをア・イ・シ・テ




そしてあたしは、唯翔に向き合った。


「もー唯翔、探したんだから!」


「わりぃ、用事があってさ」


「用事ってなに?」

スッと笑顔を消して無表情で言うと、唯翔は狼狽えた。


あはは、これじゃなんだかあたしが虐めてるみたいじゃん。


…みたいじゃなくて、虐めてるんだけど。


唯翔の後ろに隠れた奈々加という子は、すっかり怯えきった表情をしていた。


まぁ、部室にあたしがいるなんて思わないもんね。


「す、鈴木に呼ばれたんだよ」


鈴木というのは、あたしたちの担任の先生の名前。


そんな嘘であたしを騙そうなんて、バカみたい。


もうあたしは、完全に復讐をすることしか頭になかった。


「ふぅん?後ろの子は?」


「あ、あの、わたし、相沢奈々加です、サッカー部のマネージャーやっていて、唯翔先輩にはいつもお世話になっていて、その… わたしたち何でもないので大丈夫ですから!失礼します!」


一気にそう話し、そして最後一際大きな声で言うと走り去っていった。


ふわり、と朝、唯翔からした香水の匂いが風に乗って鼻を刺激する。

"何でもないので"なんて言ったら、余計怪しむと思うんだけどな。

あたしはまだなにも言ってないのにそんなムキになって否定されてもね。


「可愛い子だね」


「…そーか?」





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