あたしをア・イ・シ・テ



「誰なの?」


「それは…」


と、奈々加が言いかけたとき、木々の間から真っ黒な何かが飛び出してきたのが視界の端に映った。


なに?と思った次の瞬間には、その真っ黒な何かに奈々加が手すりの向こうに押し出されていた。


「いやぁぁぁあっっ!!!」


響き渡る奈々加の悲鳴と奈々加が落下し木がバキッ、バキッ、と折れる音がやけに耳についた。


「な…、…に」


なにが起きたの?

奈々加が…ここから落ちた?
いや、落とされた。

あの黒ずくめの人は一体誰…


逃げようにも恐怖で足が固まってしまったようで、全然動いてくれない。


唯翔は咄嗟に危険を察知したのか、サッと守るようにあたしの前に立った。


「お前…奈々加になにしてんだよ!」


侑矢の声が聞こえる。

でもあたしは怖くて唯翔の背中にしがみついて、その様子を見ることはできなかった。


「はぁ…、うるさいなぁ。アンタももう用ないし、バイバイ」


あたしはその聞こえた声に、耳を疑った。

まさか。

そんなはずが、あるわけない。


あたしがぐるぐると考えていると、今度は侑矢の悲鳴が響いた。


「いっ、やめろぉぉぉぉ!!」

「きゃはははっ、や、め、な、いっ!」




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