あたしをア・イ・シ・テ
びくっ、と唯翔の体が震え出すのがわかった。
なに?なにが起きてるの?
見たいけど見たくない。
本能が逃げ出せ、とだけ言っている。
「うぁぁぁぁあっっ!!」
一際大きな侑矢の叫び声が聞こえたあと、どさっ、と人が倒れる音がした。
まさか…侑矢は…
「ふふっ、これで邪魔物はいなくなったなぁっ」
嫌だ…この声…聞き間違いなんてありえない。
でもなんで…。
「逃げろ!芽衣!!」
ふいに唯翔にどんっと肩を押されて、あたしはよろけた。
「な、なに言ってんの、唯翔!」
なんでまたこんなやり取りをしてるんだろう。
もうこんな思いはあの時だけで十分なのに…!
「…!?」
そして、唯翔という壁がいなくなって、あたしは見てしまった。
血だらけの侑矢が、地面に倒れているのを。
黒ずくめの人が赤に染まったナイフを手に持っているのが見える。
ぬらり、と光りで反射する赤い血を見ているだけで吐き気がしてくる。
なんでこんなこと、意味がわからないよ。
「なにしてんだよ、谷口!」
「やだっ、唯翔先輩怖い顔~!」
…そう、奈々加を突き落とし、侑矢を刺したのは…
サッカー部マネージャー、そしてあたしの復讐の手伝いもしてくれた、
谷口 まどか…。