あたしをア・イ・シ・テ



「芽衣!?」


少し遠くにいた唯翔にもあたしたちの怒鳴り声は聞こえたようで、こっちに走ってこようとする。


その瞬間。


「唯翔先輩、そこから一歩でも動いたら…」


「やめろ!」


まどかが取り出したのは、さっきのナイフよりも小さい果物ナイフ。


まだ隠してたの!?


可能性がないわけではなかったけど…、まどかは、そんな子じゃなかったでしょ…?


まどかはナイフをちらつかせながら、あたしに近づく。


「私、血が見たかったのもありますけど、まだ理由はあるんですよ」


あたしが無意識で下がり続ける間にも、まどかはナイフであたしを怯えさせる。


やばい、もうすぐ高台の壁に当たるかもしれない。


だけど、背中なんて向けて逃げ出したらそのまま刺されるかもしれない。


血がみたい、ならあたしを殺すのにも躊躇はしないはずだ。


死ぬのは嫌だ。


また入院なんて、勘弁してよね。


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