あたしをア・イ・シ・テ
Ⅲ side:唯翔
「あはは…、芽衣先輩ったらあっけなーいっ」
芽衣の血のついたナイフを持ち、フラフラと俺の所へ歩いて来る谷口。
「てめぇ!なにしてんだ!」
俺はこの状況に混乱していたが、芽衣の元に行かないと、という意思だけが俺を動かしていた。
「唯翔せんぱぁい、私と二人っきり、だね?」
猫なで声を出す谷口に背筋が寒くなる。
ったく、どいつもこいつも狂ってるんだよ性格が!クソッ!
芽衣に近づき、脈を確認しようとしゃがむと、目の前にナイフの先を向けられた。
「死んだ女なんて、どうでもいいの!ねぇ、早く私とどこかに行こう?」
「芽衣はまだ死んでねぇよ!お前だけどっか行ってろよ!」
大きな声を出すものの、目の前にいるのは殺人者。
少し声が震えてしまった。
次は俺が殺されるのか?
いや、その前にきっと…。
「…芽衣!」
まだ微かに温かい芽衣の体。
でも脈が感じ取れるか取れないかぐらいの、か細いものだった。
…絶対に死なせたりなんかしねぇからな。
「もぉ~、唯翔先輩ったら!」
「…」