あたしをア・イ・シ・テ




「言うこと聞いてくれないのかぁ…」


小さく呟いた谷口の言葉の意味を理解するまで時間がかかった。


もうその時には遅かった。



「…うっ!」


「これで歩けないかなぁ?」


足を切りつけられ、血がいっきに溢れ出す。


俺を動けなくしてどうするつもりなんだ。


このままじゃダメだ。

芽衣も俺もここで死んでしまうかもしれない。


激痛が足に走るが、歩けない痛みじゃない。

…時間稼ぎをするしかねぇな。


「おい、谷口」


「なぁに?私とお出かけする気になったの?」


「お前は…、俺のどこがよかったんだ?」


我ながら何を聞いてるんだ、と思うが仕方ない。


「んん~?全部かなぁ?えへへ、でも一番はこの足が綺麗なとこ、かなぁ…走る姿もかっこいいし…」


谷口が俺のキズのついていない足を撫でる。

びくっ、体を強張らせる。


まさか触ってくるとは思わなかった。


「ふふ、唯翔先輩、可愛い…」


血の臭いが漂う谷口が近づいてくる度に顔をしかめる。


侑矢と、芽衣の…

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