あたしをア・イ・シ・テ
芽衣がこれ以上傷つけられないように離れるか…。
「唯翔先輩、逃げようとしてる?」
俺が半歩下がっただけで、冷徹な目を向けてくる。
相沢の比じゃない。
「ねぇ、私、唯翔先輩が好きなの、どうしてワカラナイノ?ねぇ、ねぇ!」
「うわぁっ!やめろ!」
谷口はナイフを持ったまま、俺を押し倒し馬乗りになってきた。
力が入らず、相手は女なのに起き上がれない。
「唯翔先輩は私のものなの!他の女になんて渡さないんだから!!」
ギラギラとした焦点の合わない目で見られ、俺の精神が崩壊しそうになる。
くそ…こんなやつにびびってるなんて。
「あぁ…そうだ…唯翔先輩が動けなくなれば…。そうしたら、丸ごと、私のモノ…」
ニタリ、と笑った谷口はナイフの切っ先を俺の喉仏辺りに向けた。
まさか、動けなくなるって俺を殺す気なのか!?
「ア…あの女の血のついたナイフなんて使えないね」
谷口は持っていたナイフを捨てると、また黒い服のポケットから同じようなナイフを取り出した。
いくつ持ってんだよ…。
俺はこんなとこで死にたくねぇ!