あたしをア・イ・シ・テ
Ⅱ
「いただきまーすっ!お腹ぺこぺこですよもー」
そう言ってイキナリお弁当のからあげを食べるまどか。
え、からあげはメインなんだから最後でしょ。
まどかは好きなものは先に食べちゃうタイプなのか。
今日は、木曜日。
約束通り、まどかとお弁当を屋上で食べていた。
ただし、もうすぐ10月なので風が少し冷たい。
今日はポニーテールにしていないまどかの髪が、さらさらと風に揺れている。
その度に、ふわりと花のようなシャンプーの匂いがした。
「あ、唯翔先輩、芽衣先輩といるときはどんな感じなんですか?照れちゃっていつも教えてくれないんですよ」
もごもご、と卵焼きを食べながら頬を膨らませるまどか。
「あはは、唯翔照れるんだ」
なんか想像できるな、"う、うるせーっ"とか言いそう。
「ん~、唯翔はねー、デートの待ち合わせには必ずあたしより遅く来るんだけどね」
「え、芽衣先輩のほうが早いんですか」
「そうそう。それで、あたし駅の中のお店とかで待ってるんだけど、唯翔は遅く来たくせに先にホームまで行って"早く来いよ"とか言うの!」
「あはは!唯翔先輩さいてーですね!」
「でも、電車乗ったらドア側にしてくれるし、根は優しいよ」
「あ!確かに試合のときとか、相手が倒れちゃったときにすごい声かけてたりしましたよ」
「そうなんだ、それはちょっと意外」
少し誇らしくて、ふふ、と笑みがこぼれてしまう。