あたしをア・イ・シ・テ
「はいはい」
下駄箱まで走ろうと思ったけど、暗いし怖いから仕方なく唯翔のYシャツを引っ張って歩く。
「おい、引っ張んな、腹が出る」
Yシャツからもまたあっさりと手を外された。
と、変わりに今度は手を繋がれた。
「唯翔の手、温かい」
「当たり前じゃん、俺、心温かいからさ」
「え?違うし、心が冷たいから手は温かいんだよ」
「ちげーしー」
何だかんだ言いながら、下駄箱に到着。
下駄箱は月明かりで少し明るいから安心。
出席番号になっているから、唯翔とは遠いので手を離した。
さっさとローファーに履き替えて、ドアの方を向いたとき、磨りガラスの向こうから黒い影がこっちを見ていた。
「ひゃぁ!!」
下駄箱のところに引いてある簀に倒れこんで、ガタンっ!と派手な音を出してしまった。
「芽衣!?」
「ひ、ぁ、人が!」