あたしをア・イ・シ・テ



「あたしも今日入ってたんだけど」


「ふぅん…、手紙ブームかなぁ?あ、とりあえず行ってくるね?」


「手紙ブームって…早く帰ってきてね」

「はいはぁい」


有莉沙と別れてから、有莉沙の手紙の送り主について考えていた。


同じクラスの佐藤くん?
あぁ、有莉沙のこと好きそうかも。

いやでも宮口くんも狙ってそう。

有莉沙可愛いからなぁ。


もしも矢澤くんとかだったら、唯翔とも仲がいいし、ダブルデートとかできるのに。


「なにニヤニヤしてんだよ、気持ちわりぃな」

「あたしが気持ち悪い?心外な」

「自意識過剰か」


べしっ、と後頭部を叩かれながら教室に入る。

なんとなく時計を見てみると、朝のHRまであと3分ぐらいだった。


「ねぇ唯翔、もうチャイム鳴るのに有莉沙平気かな?」


「ん~、平気じゃね?」


もう、唯翔ったら他人事だと思って。

ちらりとドアを見るけど、有莉沙が帰ってくる気配はない。


そうこうするうちに、チャイムが学校中に鳴り響いた。

ほどなくして、教室に担任が入ってくる。

そして、点呼が始まって、

「南川?南川は休みか?」

という先生の言葉に、あたしは"腹痛でトイレにいます"と誤魔化した。


先生もそれに納得…したのかはわからないけど、そのまま点呼は次へ行った。


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