あたしをア・イ・シ・テ



「唯翔どうし…有莉沙!!?」


そこには、頭から血を流して倒れる有莉沙がいた。

意識がない。

側には、校舎からのびる階段。


「落ちたの…か?」


唯翔が呟き、階段を見上げる。


「有莉沙!しっかりして!」

体を揺すっても、なんの反応も返ってこない。

「芽衣、落ち着け。出血してるから、揺らすな。保険医呼んでくる」


「わ、わかった…」

あたしは制服に砂が付くのも気にせず、地面に座り込んだ。


苦しそうな顔をして目を閉じている有莉沙。

あたしは、はっ!として有莉沙の腕を取り、脈を探した。


ちゃんとドクンドクン、と振動が伝わってくる。

あたしはほっとして、そのまま有莉沙の手を握りしめていた。


「南川さん!」


数人が走ってくる足音がして、担架を持った先生と、保険医の先生が見えた。


あたしはボーッとして、先生たちが有莉沙を運んでいくのを見ていた。



< 56 / 179 >

この作品をシェア

pagetop