あたしをア・イ・シ・テ
「ゆ、唯翔?え?なんで?その子…」
驚いた表情の奈々加と、青ざめる唯翔の顔を交互に見ながら、あたしは後ずさる。
「め、芽衣!違うから!聞いてくれ!」
言うと思ってたよ、唯翔。
そのセリフ。
あたしは俯き、唇を噛んで無理矢理に泣く準備をした。
「違うんだ、マジで。奈々加、お前は帰れ」
「う、うん」
そう言って、奈々加が走っていこうとするのをあたしは腕を掴んで阻止した。
これは計画にはないアドリブだけど、イイヨネこれくらい。
あたしを振り返った奈々加は、これからなにをするのかとあたしの様子を伺っている。
次の瞬間には、駅構内にパンッッッという音が響いた。
周りの人達は皆、何事かとあたしたちを見ている。
「コロスよ?」
あたしは奈々加をビンタした右手を、軽く振りながら、微笑んで見せた。
それを見た奈々加は、左頬を押さえながらなにも言わずに座り込んでしまった。
汚いよ?そんなとこ座ったら。
なんだ、なんにも言い返さないの?
ツマラナイ。
ここまでするつもりはなかったけど、あぁ、スッキリしたかも。