遠い夏の少女
遠い夏の少女
風呂から出て、冷蔵庫からビールを取り出す。
そして一気に飲み干す。
そのまま、空いた缶を握り潰し、部屋の隅に投げ捨てる。
俺ひとりしかいない部屋だ、誰に遠慮もすることなく次のビールを手にする。
なにもかもがおもしろくない。
仕事に行けば行ったで、休みになれば休みになったで、なんの高揚感も得ることも出来ず、無駄に時間を過ごしている気がする。
特に、誰もいないこの部屋に帰ってくれば、その気持ちは増大し、重苦しい自己嫌悪を増幅させる。
なんのために生きてるんだろう、俺………
いつもと同じ疑問が心を占拠する。
生きてることになんとなく疲れている。
なんとなく、死んでしまいたいと思ってしまう。
別に自殺などする気は毛頭ないが。
ただ、目的もなく時間だけを費やしているいる自分が、また、自分を取り囲む環境の全てが嫌いなだけなのかもしれない。
床に直に座りながら、3本目のビールのプルタブを開ける。
そして、タバコをくわえ火を点ける。
漂い上る煙をぼんやりと見つめながら、ビールを溜飲する。
旨味も感じない、ただ苦味だけが口に残る。
ため息とともに、根本まで吸い尽くしたタバコの煙を吐き出した。
部屋の空気がどんよりと澱んでいくのがわかる。
苛立ちに似た、何ともいえぬ倦怠感がより深く体を支配する。
俺はいたたまれなくなり、頭上の電灯を見上げた。
白い煙がその光をくすませる。
そのくすんだ光は、時折、瞬くような点滅を見せている。
そして不意に音もなく消えた。
周りが全て闇に包まれる。
先ほどまで口にしていたタバコも、フィルターを焦がす嫌な臭いを残し消えている。
俺は舌打ちをひとつして、残されたビールを全て飲み干した。
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