遠い夏の少女
ふぅ~ん、そんなことがあるんだ
当事者である俺は他人ごとのように彼女の言葉を聞いていた。
そのことが伝わったのだろう、彼女は少し口調を強める。
なに、その言い方
健一君、あなたのことなのよ
心の隙間や闇を作っちゃいけないのよ
死にたくないでしょ?
彼女の言葉を自分の頭の中で繰り返す。
まぁ、確かに死にたくはないが、生きていてもつまらない
でも、どうしろってんだ?
なぁ、美穂ちゃん
それなら俺はどうすればいい?
俺の問いに彼女は笑顔で答えた。
簡単なことよ
しっかりとした目的をもって毎日人間らしく楽しく生きていけばいいの
難しいことを言ってくれる。
それが簡単に出来てりゃ今、こんな生活してないって。
なぁ、それができないから、今の俺ってこんなんなんだが
闇の中で彼女は俺の言葉にため息をついた。
だから、気持ちを切り替えてよ
子供の頃の健一君はもっとイキイキしてた
あの頃の気持ち思い出せないの?
彼女の言葉が胸に虚しく響く。
そりゃ、そうしたいけど、俺はもう大人だ
時間も経ち過ぎている
あの頃へは戻れない
彼女は悲しみを帯びた瞳で俺を見つめた。