遠い夏の少女
停電か?
まぁ、明日は休みだ。
このまま寝ても構わない。
俺はそう思い、壁に寄りかかった。
今頃になって酒がまわったのか、全身をひどい倦怠感に包まれる。
ベッドに行くのも億劫に思い、そのまま目を閉じた。
意識が薄れていく。
この瞬間だけが気持ちいい。
このまま再び目を覚ますことがなくても構わない………
そんな思いがふと頭をよぎる。
体の力が抜けていくのを感じながら睡眠への誘いに身を任せた。
何かが俺の手に触れた気がした。
深い眠りの底に辿り着く直前に呼び戻され、俺は不機嫌に意識を覚醒させた。
そして、自分の手を見る。
しかし、闇に包まれた空間では俺の視覚はなにも認識することは出来なかった。
気のせいだと思うことにして、もう一度睡眠の誘いへ身を任せることにした。
だが、再び何かが俺の手に触れた。
しかも、今度ははっきりとその感覚が伝わる。
俺の手の甲になにか、生命の温もりとでもいうのであろうか、はっきりとその存在を感じることが出来る。
眠気は飛び去り、俺ははっきりと覚醒した。
なんだ?
俺は呻くように声を絞り出す。
すると、俺の右手に触れている何かは、その存在を示すように俺の手を握り締めた。
反射的に俺は手を引っ込める。
だが、その存在は俺の手から離れることなく、俺の手を握り締めていた。