遠い夏の少女
健一君、思い出してくれたようね
俺を包み込む存在は少し明るい声で話しかけてきた。
美穂ちゃん………なのか?
闇の中に見えないはずの顔が浮かぶ。
祖父母の葬儀で会ったあの少女だ。
うん、そう
久しぶりだね、健一君
なかなか思い出してくれないから疲れちゃったよ
その声とともに、闇に広がる彼女の顔は笑みを湛えた。
なぁ、美穂ちゃん、なんで君はここにいるんだ?
不思議なことに、自分の置かれた状況を受け入れつつある。
俺はこの状況に於いて、頭に浮かんだ言葉口にしていた。
最初に言ったでしょ?
あなたに死神が取り憑こうとしてるのよ
健一君、あなた、人生を投げやりにしてない?
つまらないとか、死んでしまいたいとか、本気じゃなくても、心のどこかで思ってない?
そう美穂ちゃんの声が頭に響く。
闇に広がる彼女の顔は少し悲しみを帯びていた。
そういう心の隙間に死神は取り憑くの
だからね、健一君、しっかり自分を見つめて生きていってほしいの
私、あなたにそのことを伝えたかったの