教科書1ページ
車の中はあったかくて










消臭剤の香りが鼻についた












ウインカーのカチカチという音に混じって木田先生が口を開いた










「何してたんだ?」








ハンドルを回しながらミラーで私の事をちらっと見る












「大事な物落として…それで探してたら………雨…………降ってきちゃって…………」








「そっか……それだけ大事な物なんだな」





真っ直ぐな道を走り出す










度々出す指示の間に会話を入れてくる











「何落としたんだ?」








「…キーホルダーです、割れたハートの…」








「……あ」










「?」












先生が信号で停まってからポケットを漁った











「もしかしてこれの事か?」







「っ……あっ!! これ!!」









「教室に落ちてたぞ」











「な、何だあ~…良かったあ…………」











「そんなに濡れなくても次の日見付かったのにな」



って笑った










ちょっとむっとするとミラーで見てたのか、木田先生が「ごめん、ごめん」と謝った











でも





「見付かって良かった…」











「彼氏とお揃いか?」





ニヤニヤしながら聞いてくる先生に思わず真っ赤になって





「違います!!」




って大声を上げてしまった








その後に




「……親友とお揃いです」





って呟いた









「大事な友達なんだな」



って言ってくれた木田先生にお礼を言う










もう少しで家に着く時に







先生が言った

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