付き合ってる相手が、アイドルでした。
付き合ってる相手が、アイドルでした。
夢か別世界かの話みたいで、私は誰にも言えない恋愛をしている。
付き合っている相手が、アイドルでした。
「なぁ、いい加減、お前の家に行ってもいいだろ?」
「だ、だめ。そ、それはダメ。」
「んで、週刊誌とかその辺は上手く誤魔化すからって。」
「そーいう問題じゃなくって、心の問題と、あと、部屋の中が問題で。」
そういうと彼は、ちぇっ、とわざとらしく舌打ちをした。
彼は、恵藤昴。今、世間を虜にしているアイドルグループの一人だ。
デビュー当時はそんなに売れていたグループでもなかったのだが、最近、ダンスに磨きをかけて、さらに複雑なパート別けで世間を圧倒させ、あっという間に出すCDは常に売上トップ、彼らが表紙を飾る雑誌は発売日当日に書店から消え去るほどだった。
「ん、分かった。で、今度さ、メンバーがお前に会わせろって煩くって、事務所にはまだ黙っときてぇんだけどさ、メンバーには紹介しときたいんだ。」
「えあ、え、あ?あ、わっ?」
「んだよ、それもダメってか。」
「違うけど、そんな、私みたいなのがほいほいアイドルと会っていいわけないと思う。」
「んだよ、千穂はまだアイドルと付き合ってるつもりか?いい加減、俺本体を見ろ。」
「見てるよ、昴は昴だよ。でもね、なんていうか。」
「あー、ぐだぐだうぜぇ、次の水曜休みだろ?空けとけ、いいな。」
昴とのデートはだいたいが高級レストラン。
ローマ字の筆記体が連なって何が書いてあるのか分からないメニューのあるフレンチやイタリアンレストラン。あとは、回ってないお寿司屋さんに、板前さんが目の前で揚げてくれる天ぷら屋さん。そういった高級店のさらに奥、ビップ専用というのか、総理大臣や大統領も使ってそうな、そういう所だ。
もちろん、庶民の中の中間層、庶民代表みたいな私にはまったく不釣合いだ。