鬼姫伝説Ⅲ
「・・・そして、泣きたくなる」
体操座りをした膝に体をうずめながら鬼羅さんは呟いた。
なんだか、切なそうで悲しそう。
もしかして、お姫様の事を想ってる?
匂いが、似てるのかしら。
鬼って、嗅覚いいのかな。
「好きだったんですね、お姫様のこと」
「・・・お前には、関係のないことだ」
「なによ。いい匂いだって言ったくせに」
私がからかうようにそう言うと、鬼羅さんは私を睨みつけるようにして見た。
私から魚を奪うと、大口をあけて頬張った。
「今でも、好きなんですか?お姫様のこと」
「・・・ああ。愛してる」
愛してる・・・。
そんなことをサラリと言えるような人なんだ。
意外・・・。
「これからも、ずっとだ」
ああ、素直にいいなぁと思う。
そんな風に思ってもらえる人は。