鬼姫伝説Ⅲ
「鬼羅さん・・・、泣いてる」
少し離れた場所からその様子を眺める。
目をそらすことができなかった。
とても痛々しい姿。
肩を震わし、身体を丸め込んで泣いている。
声を押し殺しているのか、小さな嗚咽だけが聞こえて。
胸が、苦しくなった。
鬼羅さんは手に何かを持っていて。
それは何やら布のようなもの。
それを抱きしめ顔をうずめて泣いていた。
小さく誰かの名を呼んでいるような。
それでもここからは聞こえなくて。
叫ぶような。
悲鳴のようなその想いだけが突き刺さる。
なんて悲しい景色だろう。
切なくて、苦しい想いが充満してる。
「行こう。ダメだ、これ以上いては」
邪魔をしてはいけない。
鬼羅さんの、思いの邪魔を。