鬼姫伝説Ⅲ
襲撃
口が悪くて、少し乱暴な所があるけれど、優しくて暖かい人よ
お母さんが一度だけ、お父さんの事を教えてくれたことがあった。
何度も私がしつこく聞いたら、そう教えてくれたんだ。
そう言ったお母さんの表情も優しくて暖かくて。
とても幸せそうだった。
そんな風にお母さんを幸せにしてくれるその人は、今どこにいるんだろう。
なにも知らないその人の事を、知りたい。
「飯は」
ぼんやりとしていた頃、後ろから声をかけられた。
振り向くと鬼羅さんで。
河原で泣いていた時の鬼羅さんではなく、もうすっかりいつもの強気な鬼羅さんに戻ってた。
「もうできてますよ」
あれからずいぶん経っているんだもの。
ご飯を作る時間はたんまりあった。
それ程長い時間、鬼羅さんは泣いていたのだろうか。
千代さんという人を思って・・・?