鬼姫伝説Ⅲ
「鬼羅さん・・・、ありがとうございました・・・」
快斗が助けてくれた鬼羅さんにそう言った。
快斗が初めて鬼羅さんと呼んだ気がする。
そのことに、私は少しうれしくてにっこりと笑った。
「いや・・・」
鬼羅さんは、なぜか少し寂しげな表情をしていて。
そう言うと立ち上がった。
「もうすぐ、済む。もうしばらくここにいろ」
「・・・また、行ってしまうんですか?」
「ああ。大丈夫だ。もうここには近づかせない」
安心させるようにそう言うと鬼羅さんは行ってしまった。
さっきの表情は、なんだったんだろう。
すごく、寂しそうだった。
なにかを思い出しているような・・・。
「私、鬼羅さんの事・・・もっと知りたい」
「・・・どうした?」
「わからないけど・・・。知りたいの」
あの表情の訳を知りたい。
知って、どうしようもないのだけど。
お母さんと似たような表情を浮かべる鬼羅さんを、知りたいと思った。
そうすれば、お母さんの気持ちもわかる気がして・・・。