鬼姫伝説Ⅲ
15年経ってもこの制服は代わってない。
私も、この高校を目指してるから。
お母さんが教えてくれた。
お母さんもここに通ってたんだよって。
この制服は襟の裏に名前を書くところがあるんだって言ってた。
盗難防止だって、書かされるんだって。
私はそっと襟を裏返した。
「ひだかちな・・・。お母さんの名前っ・・・」
色あせてボロボロになって見えにくくなってるけど。
お母さんの字でそこにはそう書いてあった。
「お母さんの・・・です」
なんで。
だって。そんな。
「千菜の、娘か・・・。そうか」
鬼羅さんの瞳が揺れている。
鬼羅さんが、思っていたのは。
これを抱きしめて泣いていたあの時に、思っていたのは。
お母さんのことだったの?