鬼姫伝説Ⅲ
「・・・どうした」
「鬼羅さんは、信じられますか?私が、娘だって。私のお母さんが、鬼羅さんの知っている千菜、って人と同一人物だって」
私の言葉しか聞いていないのに。
私が嘘を言っていると思わないだろうか。
私には、お母さんの制服という物証がある。
鬼羅さんにとっても、お母さんに渡したくしがあるって言ったって制服みたいに名前が書いてあるわけではないし。
「どうだろうな。心当たりがないわけではないが。あれと結ばれたのは、一度きりだ・・・。たったの・・・」
一瞬、なんのことだか分らなかった私にも、それがどういう意味なのか分かり顔をポッと熱くさせた。
ちょ、ちょっと。
なにサラッと娘の前で・・・。
「あれから10年の月日が流れた。時の移動というのはおかしなもんだな。千菜と別れたのは10年前というのに、目の前にいる娘は14歳というのは、不思議なもんだ」
「そうだね」
「寂しい思いをさせたか?」
鬼羅さんが私を見た。
優しい瞳。
あんなに、冷たい瞳をしていた鬼羅さんが今はこんなに暖かい。