鬼姫伝説Ⅲ
「由羅!・・・大好きよ。いってらっしゃい」
背中に投げられた言葉を無視して玄関を勢いよく閉めた。
お母さんは、きっと誰よりも愛情表現をする。
一日に何度も、ああして“大好きよ”って言う。
私はそれが、いやだった。
思春期の反抗期、なのかもしれないけど。
うちの神社の境内を通り、長い階段を下りた先に快斗が待っている。
足早に階段を下りると、すでに快斗は待っていて鳥居の前に背を向けているのが見えた。
「快斗!」
「よお、お。馬子にも衣装だな」
「うっさい」
一言目にからかうような言葉を言われむすっとする。
ズカズカとカイとを通り過ぎ、会場の方向へ進んだ。
「おいおい。褒めたんだって」
「どこがよ」
「可愛いよ、由羅」
「気色悪い!」
虫の居所が悪いんだからね!