鬼姫伝説Ⅲ
「なんか、怒ってる?」
「・・・怒ってない」
「怒ってるじゃん。・・・千菜さんとなんかあった?」
“千菜さん”っていうのが、うちのお母さん。
快斗はお母さんの事をそう呼んでる。
「・・・別に」
「ほんと、お前ってわかりやすいのな」
快斗にそう言われ、私は足を止めた。
「お母さんには感謝してる。私を一人でここまで育ててくれて。神社をあそこまで立て直して、巫女の仕事がんばってて・・・」
いつも一生懸命で、笑ってて。
私の自慢のお母さんだ。
「でも、私にはお母さんがわからない」
時々見せる寂しそうな顔とか。
私を見る時の表情とか。
私に、なにを見てるのか。
「この髪だって、私はすごくすごく嫌なのに。お母さんはこれを見ても、こんな私を見ても、大好きだって」
この髪のせいで、小さいころからからかわれて、いやなこともいっぱい言われた。
いやでいやで、髪の毛をむしったことだってある。