鬼姫伝説Ⅲ
「その着物、俺が千菜にあげたものだ」
「え?」
出発を前に控えソワソワしていると、鬼羅さんが私の隣に座った。
琉鬼さんが貸してくれた着物。
お母さんが着ていたものだったの?
「なんで今まで教えてくれなかったの?」
「・・・気恥ずかしくてな」
「じゃあ、なんで今教えてくれたの」
「お前には、知っていてほしいと思ったんだ」
そう言って鬼羅さんは笑った。
もうすぐ、別れがくると言っているみたいで。
「鬼羅さんは、私たちと一緒に来る気はないの?もし、人間になれなくったって、鬼のままだってきっとお母さんは鬼羅さんに会いたいと思う」
「・・・怖いのかもしれんな」
「怖い・・・?」
鬼羅さんから出た、らしくないような言葉。
怖い。
鬼羅さんにも、怖いと思うことがある。