鬼姫伝説Ⅲ



「その着物、俺が千菜にあげたものだ」

「え?」




出発を前に控えソワソワしていると、鬼羅さんが私の隣に座った。
琉鬼さんが貸してくれた着物。

お母さんが着ていたものだったの?




「なんで今まで教えてくれなかったの?」

「・・・気恥ずかしくてな」

「じゃあ、なんで今教えてくれたの」

「お前には、知っていてほしいと思ったんだ」




そう言って鬼羅さんは笑った。
もうすぐ、別れがくると言っているみたいで。




「鬼羅さんは、私たちと一緒に来る気はないの?もし、人間になれなくったって、鬼のままだってきっとお母さんは鬼羅さんに会いたいと思う」

「・・・怖いのかもしれんな」

「怖い・・・?」




鬼羅さんから出た、らしくないような言葉。
怖い。
鬼羅さんにも、怖いと思うことがある。




< 99 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop