恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜


一方部屋の中では、津田の立会いの元、桐人が現場の調査をしていた。


「……今さら調べたって、何も出てこねぇと思うぞ」

「警察の凄さはもちろんわかってるよ。俺は、なんていうかこう……増本さん夫妻の夫婦関係をちゃんと知っておきたいというかさ」


そう言うと、死体のあったベッドの上は一瞥しただけで、部屋の隅にある机の方へ向かっていく桐人。

津田はそんなところに何があるのかと、面倒臭そうにその後ろをついて行く。


「この写真、すげーラブラブ」


桐人が最初に目をつけたのは、机の上の写真立て。亡くなった妻が増本の頬に口づけている、仲睦まじい写真がそこにはあった。


「……実際は不倫してたくせに、よくやるよ。女っつーのは恐ろしい生き物だ」

「あれ? 津田刑事もそういう方面で痛い目見たことあるの?」

「…………俺の話じゃない。この仕事してると、嫌というほど男女のこじれる様を見せつけられて、そう思っちまうってだけだ」

「……ホントに? なーんか実感こもってた気がするけど」


好奇心に輝く桐人の目に津田は舌打ちをし、話題を自分から逸らすように写真立てを手に取ると、目を細めて言う。


「まぁでも、こうして被害者の演技が完璧だったからこそ、不倫に気付いた時の増本のショックも大きかったんだろう。……殺意が芽生えるほどに」

「うーん……そうなのかなぁ」


桐人はどこか納得いかない様子で机の上をさらに物色する。

すると、雑然と重ねられた本の間から、一枚のハガキを見つけた。



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