恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
「……結局、ソイツ抱いても何にもならなかったんだけど、俺に対する仕返しなのか、彼女が学校にチクったらしくてさ。もう卒業した生徒とはいえ、未成年だろ? 大事にはしないから――って自主的に退職促されて、そんで今に至る……ってワケだ」
酔いが回っているせいか、話の内容にそぐわない声でからからと笑った俊平。
今の彼に何を言っても無駄だ。
そう思いつつも、友人たちは口を挟まずにいられなくなった。
「……お前、最低だな」
「ああ。……夏耶ちゃんがお前を選ばなかったこと、正解だと思う」
気心の知れた同性の友人なら気持ちをわかってくれるのではないかと思っていた俊平は、つまらなそうに舌打ちをした。
「なんだよ……みんな、カヤの味方かよ」
「当たり前だろ……つーか俊平、よく聞け。これからお前がやるべきことを一から教えるから――」
「うるっせぇな、説教かよ。……つまんねぇ、俺は先に帰る」
フラフラとした足取りで立ち上がった俊平は、伝票を持って勝手に会計を済まし、居酒屋を出て行ってしまった。
残された友人二人は、空席になった椅子を見て、少し切ない気持ちになっていた。
「……いつからああなったんだ? 俊平」
「さぁ。……昔はもっとまともな奴だったよな」
「夏耶ちゃんに対する執着心がああさせてるのかね……」
「やっぱり、あのときちゃんと付き合っておくべきだったんだよ、あの二人は」
取り戻せない過去を嘆いて、二人はその後も静かに酒を酌み交わした。
二人とも俊平にきついことは言ったが、本心では彼に幸せになって欲しいと思っている。
それが伝わらないのがもどかしい。
けれど、今彼を追いかけていって、諭すほどの情熱はない。
自分たちはいつの間にか大人になってしまったなと苦笑しながら飲む酒は、いつもより少しだけ苦い気がするのだった。