恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
一方俊平は、もやもやした気持ちを抱えながら、地元の街を彷徨っていた。
(アイツら、偉そうなこと言いやがって……俺だって、本当は知ってるんだよ)
夜風に吹かれていると、酔いに任せてヒートアップしていたさっきの自分が嘘のように、冷静になってくる。
友人たちにはさも自分が被害者であるかのように語ったが、本当は、諸悪の根源は、自分。
それに気づいているからこそ、現実から逃れるように、あんな風に話してしまった。
夏耶の妊娠のことを明かさなかったのも、自分が悪者になるのを避けるためだ。
「……小せぇ男だなホント」
自嘲するように呟き、酔いでふらつく身体を引きずるようにして歩き続ける。
今日は本当なら実家に泊まることになっていたが、家に帰れば琴子との結婚話を避けては通れないだろう。
それを思うと実家に帰る気になどなれず、代わりに彼はある場所を目指していた。
(……この坂。いつもカヤと一緒に、くだらねぇ話しながら登って……)
道の両脇に、ちょうど開花の時期を迎えた紫陽花が咲き乱れる、細くて急勾配の懐かしい坂道。
そこを上がりきったところに、二人の通った公立高校がある。
三階建ての古い校舎は明かりがすべて消えていて、人の気配もない。
俊平はそれをいいことに、校門を乗り越えて敷地内に侵入し、丸みを帯びた屋根が特徴的な体育館に向かっていく。
「……開いてるわけない、か。そりゃそうだよな」
少しでいいから、バスケットボールに触れたい。
そう思ってダメもとで扉に手を掛けてみたが、当然施錠されていて、ビクともしなかった。
ため息をついて入り口の小さな階段に座り込むと、俊平は星ひとつ見えない、曇った夜空を仰いだ。