恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜


夏耶もそのことはかなり気になっていただけに、息を呑んで豪太の答えを待つ。

桐人のことを信じている、その気持ちに嘘はないが、優しい彼が、部下の身を案じていつも通りの弁護ができないのではないかということも、少し不安だった。


『……表面上は、いつも通りですが……少し、勢いがないように思えます。増本の言い分に足りないことはないかと確認されても、特に付け加えることもなかったですし……』

「そりゃこちらにとってはありがたい情報だ。念のために聞くけど、嘘はついていないよな?」

『もちろんです。……沢野さんは、無事ですか? できれば、声を……』

「――おっと。それはダメ。でも大丈夫。生きてるし、ちゃーんとあの男を有罪にしてくれればキミたちの元へ返すから」

『……約束ですよ』


その言葉に思わず声を上げそうになった夏耶を遮るように、三河は通話を切ってしまう。

夏耶は下唇を噛んで、再びテーブルの上に置かれた携帯を見つめた。


(先生……勢いがないって、どうして……? それに、豪太君の“約束ですよ”――って? まさか、私のために本当に……わざと負けようとしてるの?)


「……よかったねぇ。命は助かりそうで」


そんな夏耶を嘲笑うかのように、三河が口の端を歪めて言う。

外道。卑怯者――――。

夏耶は心の中で彼をそう罵りながら、悔しくて涙が出そうになるのを必死で堪えていた。



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