恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
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「たまには外に出なさい! アンタが家に居ると掃除もできやしない!」
(……くそ、うるさいな)
俊平は寝そべっていたソファの上から起き上がると、目を吊り上げた母親からエコバッグを無理矢理押し付けられる。
ここは俊平の実家。
時刻は現在午後二時を過ぎたところである。
「卵とお豆腐とネギね」
「……はいはい」
こうして外出の用事を頼まれたとき、俊平は五回に四回は断っている。
琴子との滅茶苦茶な結婚式以来、近所の顔見知りや地元の友人に会ったりしたら面倒だからだ。
今回も本当は断りたかったが、俊平にも負い目がある。
結婚式でとんでもない話を暴露され、花嫁に逃げられた息子。親子の縁を切られても不思議はないのに、五年間働きもせず実家でぐうたらしているのを黙認してもらっているのだ。
たまには何か手伝わないと、追い出されてしまうような気がした。
エコバッグを手に玄関を出て、近所のスーパーへ向かおうとした時、母親が慌てた様子で玄関から出てきた。
「俊平! ゴメン、その中にお財布入れるの忘れてた」
「……あ。ホントだ、入ってねぇ」
母親から財布を受け取り、気を取り直して歩き出そうとすると、どこかから視線を感じるような気がして俊平は辺りを見回した。
すると、自分の家から二軒先の、ちょうど夏耶の実家の前の道路で、小さな男の子がこちらを睨むようにして立っていた。