恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
「これからどんな困難があったとしても、俺は沢野を離さない。これから一生を掛けて、愛し抜くと誓うよ」
「せん、せ……」
涙をあふれさせ、コクコクと何度もうなずく夏耶。
桐人は彼女の濡れた頬を優しく拭って、それから少し残念そうに時計を見上げる。
「さて……帰ろっか」
いつまでも再会の嬉しさに浸っていたいけれど、ここでその欲望に負けていたら、一児の母親である夏耶とのこれからなんて歩んで行けないから……焦ってはダメだ。
時間はあるのだから、ゆっくりでいい。
高速を降りて、渋滞しないまわり道へ。
彼女と、彼女の子供と、三人。
一番歩幅の小さい者に合わせて。
遠い先にある光を目指して、一歩一歩、着実に進もう。
たとえ誰に抜かされても。
クラクションを鳴らされても――。
恋愛渋滞~踏み出せないオトナたち~
END