恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
「律ちゃん、最近どう?」
「うーん、忙しい。好きな仕事だから楽しいけど」
「お仕事、なんだっけ?」
「アパレルブランドの営業」
「カッコいいね、りっちゃんらしい」
それを聞いてから改めて律子を眺めてみると、今日の律子の服装は確かにハイセンスな雰囲気を醸し出していた。
コートの中は見えないけれど、おおぶりなピアスや派手なピンクのルージュ、棘のようなスタッズ付きのパンプス。
ちゃんと自分に似合うものを知っていて、さらに個性までプラスしている律子を見ていると、夏耶は気合を入れたはずの自分の格好がひどく野暮ったく感じた。
「夏耶は? 弁護士なれた?」
「……まだ。今、五月の司法試験に向けて勉強中」
「へえ、大変だね。でも、夏耶なら大丈夫でしょ。昔から頭良かったもんねー、夏耶と俊平」
そんなことないよ、と返しつつ、さりげなく飛び出した“俊平”の名に、夏耶の胸が乱れる。
(大丈夫……りっちゃんは、知らないはずだもの。私の気持ち……)
夏耶は静かに唾を呑みこむと、平静を装い、尋ねてみる。
「……しゅんぺー、来るのかな」
「来るんじゃない? 日曜なら学校は休みだろうし」
「そ、か……」
「いつ結婚するんだろうね。結婚式呼んでって言ってみようよ」