恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
7.Violation
*
――二年前。
観光客でにぎわうグアムの西海岸、タモンビーチ。
日本からたった三時間余りで気軽に行けるそのリゾートを、俊平は大学の卒業旅行で気の合う友人二人と訪れていた。
「……あー、明日にはもう帰んのか」
「つーか海外女子は積極的だとか言ったの誰だよ? 逆ナンされるどころか、俺らなんて完全にガキ扱いじゃん」
「だな……」
彼らは白い砂浜に手をついて足を投げ出し、エメラルドグリーンの浅瀬で遊ぶ女性の水着姿に目を細める。
解放感あふれる美しいビーチで、何か特別な出会いがあるかもしれない――それがこの旅行の合言葉だった。
けれど、それは気分を盛り上げるための冗談であり、俊平以外の二人は、友達同士めいっぱい楽しむだけで満足だった。
それに対し、“たとえ旅行先での、一夜限りの恋でもいい”
そんな風に切実に出会いを求めていたのは、高校を卒業してからもずっと夏耶の影に心を支配されたままの、俊平だけだった。
「……ちょっと、散歩してくる」
すくっと立ち上がった彼は、友達を砂浜に二人残して海岸線をあてもなくぶらぶらと歩いた。
日本よりべたつきの少ない海風が肌を撫でていくのが心地いい。
(いつか、カヤと一緒に来れたら――)