恋愛渋滞 〜踏み出せないオトナたち〜
いつも琴子の身体を気遣い、口うるさいくらいに生活習慣のことを色々言ってくる俊平だったが、セックスのことに関してだけは違った。
(雪の中散歩するより、こっちの方が絶対に、体力消費させられてる……)
身体の下でぎしぎしとうるさく軋むベッドの音を聞きながら、琴子はそんな納得いかない思いを抱えていた。
「琴子……もうちょい、脚、こっち」
「え? ……無理、だよ……痛いっ、てば……」
たとえ相手が恋人でも、心の隙間があるときに身体を重ねるのは、女にとって一種の拷問だ。
けれど琴子は無理な体位を要求されても唇を噛んで耐え、俊平が満足してくれるのを待った。
「……ね。同窓会、やっぱり行ったら?」
琴子に腕枕をしながらうとうとする俊平に、彼女はもう一度そう持ちかけてみる。
俊平は「んー」と情けない声を出しながら寝返りを打ち、琴子の額に自分の額をコツンとぶつけて言う。
「……そうだなぁ。琴子の体調が良ければ……」
「平気だってば。……今だって、あんなにいっぱいされたのに、元気でしょ?」
琴子がはにかんでみせると、俊平は目を細めて彼女の頭をよしよしと撫でた。
琴子が拷問に耐えたのは、このためだったのだ。
俊平に“うん”と言わせるのは、セックスで疲れているときに限る――今までの同棲生活で、彼女はそれを学んでいた。