面倒くさがりの恋愛
「君らみたいな年代からしたら、30越えた男なんておっさん扱いされるだろうな、と思っていたから、声もかけられなかったけど」

「33なら、おじさんにはまだ早いでしょう」

「もう34になるけどね」

「え。そうなんですか?」

「うん。なるの。だからね」

 だから?

「34になる前に、告白しておこうかなと思って」

 微かな煙の向こうに、真顔になった生嶋さんの表情。

 とても真っ直ぐだ。

 呆れるくらいに真っ直ぐで、困る。

 この人は、きっと嘘をつく事はないんじゃないかな。

 普段から真顔で真剣な顔は、きっと真面目だからなんだろう。

 真面目で、真剣で、真っ直ぐで。

 駅前のラーメン屋さんを告白する場所に選ぶなんて、少しめちゃくちゃだけれど。

 言いたいことがあったなら、言いたいと思った時に言うんだろう。

 酔っぱらいの世迷い言じゃないんだ……

 それなら。

「私は、恋愛するつもりはないので」

 呟くと、目を丸くされた。

「どうして?」

「前に、嫌な事があったので」

「前彼? でも、俺はまた別人だけれど?」

「束縛されるのが嫌なんです。彼氏が出来ると、あれはするなこれはするなって嫉妬してうるさいし。正直そういうのは面倒なんです」

「いや。まぁ、嫉妬は多少するかもしれないけれど。君はまだ俺を知らないでしょう?」

「生嶋さんだって、私を知らないです」

「うん。だから質問もしているわけなんだけど。付き合ってから知っていくのも楽しいよね?」

 それは、その通りだ。
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